産後ケア「ショートステイ」を利用
段々と不安定な精神状況に陥り、睡眠時間も細切れで疲労は蓄積されるばかり。退院して1か月経過するころには心身ともに限界がきました。
娘のお世話をすることもままならなくなり、夫に会社を休んでほしいと懇願します。
コロナ真っただ中、夫が勤める会社の業績は芳しくない状態で、育休の取得は難しいと以前から言われています。それでも、日中、娘と2人きりになるのが不安で苦しくて仕方なかったのです。夫はそんな様子を見て、上司と相談して1日だけ休暇を取ってくれました。
何日も連続で夫に会社を休んでもらうわけにはいかないけど、このままじゃ到底育児なんて出来ない…。
そんな時、産院の助産師さんが教えてくれた「ショートステイ」の存在を思い出し、藁にもすがる思いで連絡をしました。
本来であれば数日前から予約が必要だったようですが、電話越しにもひっ迫した様子が伝わったのか、翌日から2泊3日で受け入れてもらえることになりました。
ショートステイのために産院が用意してくれていたのは、何の因果か、入院中、娘と一緒に過ごした病室でした。
娘と夫と幸せな未来を描いていた部屋のベッドで、ただ、ただ、宙を眺めながら、涙があふれて止まりません。なにもすることがないので、泣き疲れては眠るの繰り返しです。食欲も低下しており、産院の豪華な食事も喉を通りません。
カウンセリングに来てくれた助産師さんに、「赤ちゃんが産まれて、今が一番幸せな時なのに、どうしてそんなに悲しいの?」と尋ねられましたが、答えられませんでした。
「幸せじゃない自分はおかしいのか。きっと、自分が育児も家事も頑張れなかったから、幸せになれなかったんだ。」
ショートステイ中、娘については母子同室か新生児室での預かりか選べる、とのことでしたので、ずっと新生児室で預かってもらっていました。
授乳の時だけ内線で呼ばれて、娘に触れます。そのわずかな時間でさえも、娘と向き合うことが辛く、罪悪感や葛藤が入り混じり、涙を零す始末でした。
2泊3日のショートステイが終了
私は初日からずっと、泣きながら寝ているのみ。助産師さんがたまに検温やお話に来てくださいましたが、気分が晴れることはありません。
夫とはラインで連絡を取り合っていましたが、家事も育児も放り出してしまって申し訳ないという旨の懺悔の言葉を伝えることしか出来ませんでした。
ショートステイ終了の日が、娘の1か月検診と重なっていたので、退院と同時に1か月検診を受けることに。
「産院の管轄は赤ちゃんが生後1か月になるまで。1か月検診を終えたら産院では担当できません。でも、このまま放ってはおけないから、地域の保健師さんに連絡します。きっと、力になってくれるから。もし、精神科を受診するなら、紹介状を書くから教えてください。」と先生に言われます。
「紹介状を書く」、その言葉で、自分が病気であることに気づきました。
保健師さんとの出会い
この出会いから、私の、治療へ向けた歩みがスタートします。
そもそも、保健師とはどのような人なのでしょうか。
ショートステイ最終日、私の住んでいる地区の担当という保健師さんが産院にいらしてくださり、迎えに来てくれた夫と一緒に、面談をすることになりました。
せっかく助けてくれようとしている保健師さんに対して、「赤の他人に、なぜ、自分が母親としてやっていけなかった醜態を晒さないといけないのか…。きっと、この人も私を蔑んで笑うんだ…。」面談が決まった当時、そんな風に思っていました。
担当の保健師さんは優しそうな女性の方で、「なにも出来なかった。」と、泣きながら言葉を詰まらせる私の話を、遮ることも、責めることも一切しませんでした。
ただ、しっかり手を握って、うなずきながら「辛かったね。」、「頑張ったね。」、「大丈夫だよ。」と、聞いてくれました。
夫は、私がショートステイを利用している間に、会社にテレワークの許可を取り、当面の間、自宅にいてくれるように。
私は面談のときにこの話を初めて聞いたので、「帰ってから、娘と2人きりにならなくていいんだ。」と、少し安心しました。
夫からも今までの状況を保健師さんに説明して、保健師さんが状況の確認を終えたところで、3つの提案をされます。
精神科の受診
誰が見ても、正常な精神状態ではなかったようです。
保健師さんは、なるべく早く受診できる精神科を探すので早急に受診を、とおっしゃっていました。精神科は中々予約をとっても順番待ちが多く、すぐに対応してもらうのは難しいそうです。
夫と2人で、それに従うことにし、産院の先生に紹介状を書いてもらうよう頼みました。
「受診する病院が決まったら、そこに向けて紹介状を書くから、連絡してほしい。」と言われ、病院が決まり次第、紹介状を書いてもらい、受診する手はずとなりました。
子育てOBの方に毎日通ってもらう
当時は「子育てを終えたベテランさんにお家に来てもらって、家事や育児を手伝ってもらおう。家事をしてもらってもいいし、赤ちゃんを見てもらって、お母さんは寝ててもいいよ。色々と相談して悩みを聞いてもらおう。」という旨の説明を受けたと思います。
後から調べたところ、養育支援訪問事業というものに該当するようです。
コロナも流行している時期だったのと、誰かを家に招くことはあまりなかったので、知らない人を自宅に上げるのには抵抗がありました。
しかし、「閉鎖的な環境にしてしまったことも、関係しているだろうから、来てもらった方がいい。」と夫が判断したため、お願いすることに。
こちらも担当の方が決まり次第開始、調整してくださるとのことでした。
養育支援訪問事業は、来ていただいて本当によかったと思っています。
赤ちゃんと離れる選択肢
「もう、限界だと思ったら、赤ちゃんを一時的に預けて離れることができる。赤ちゃんと離れる選択肢があることを、覚えておいてほしい。今の状態のまま赤ちゃんと一緒にいるのはとても苦しいと思う。だけど、赤ちゃんと離れることも苦しい。どちらを選んでも、今は苦しい時期だと思う。……だったら、お母さんが少しでも楽になれる方を選んでいいんだよ。」
やはり、私が母親失格だから、私から娘を取り上げようとしている、と感じてしまい、そんなことを言われてしまう自分が、みじめに思えてなりませんでした。
「………嫌です。」と小さく答えたのを覚えています。